大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成4年(わ)1014号 判決

本店所在地

名古屋市緑区鳴海町字細口三番地の一

株式会社中日本實業

(右代表者代表取締役 西尾勉)

本籍

名古屋市緑区鳴海町字平手一四〇番地

住居

名古屋市緑区鳴海町字細口三番地の一

会社役員

西尾勉

昭和二二年三月二日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官河瀬由美子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社中日本實業を罰金六〇〇〇万円に、被告人西尾勉を懲役二年六月にそれぞれ処する。

被告人西尾勉に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社中日本實業は、名古屋市緑区鳴海町字細口三番地の一に本店を置き、金銭貸付及び不動産売買等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人西尾勉は、被告人会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人西尾勉は、被告人会社の右業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和六二年六月一日から同六三年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億六四六八万一二九一円、課税土地譲渡利益金額が五七〇〇万一〇〇〇円であったにもかかわらず、同年八月一日、名古屋市熱田区花表町七番一七号所在の所轄熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七〇万三四三八円、課税土地譲渡利益金額が零円で、これに対する法人税額が二一万〇九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七九六〇万六二〇〇円と右申告税額との差額七九三九万五三〇〇円を免れ

第二  昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億三九八一万一三九九円であったにもかかわらず、同年七月二九日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が四四一万五九〇一円で、これに対する納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五七七六万〇六〇〇円と右申告税額との差額五七七六万〇六〇〇円を免れ

第三  平成元年六月一日から同二年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が二億五三一一万四七四三円、課税土地譲渡利益金額が六二八八万七〇〇〇円であったにもかかわらず、同年七月三一日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二九〇万九四六〇円、課税土地譲渡利益金額が零円で、これに対する法人税額が八四万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億一九二三万一七〇〇円と右申告税額との差額一億一八三八万八一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す)

判示事実全部について

一  被告人西尾勉の当公判廷における供述

一  被告人西尾勉の検察官に対する供述調書四通(乙2ないし5)

一  五十嵐真知子の検察官に対する供述調書(甲32)

一  検察官作成の搜査報告書(甲6)

一  検察事務官作成の搜査報告書五通(甲4、18、20、25、26)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲5)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一六通(甲7ないし17、19及び21ないし24)

判示第一の事実について

一  藤原顕整、佐藤大二及び大嶽孝成の検察官に対する各供述調書(甲27ないし29)

一  大蔵事務官作成の証明書(甲1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲2)

判示第三の事実について

一  藤原顕整、早川昇三及び石原宣彦の検察官に対する各供述調書(甲27、30、31、)

一  大蔵事務官作成の証明書(甲3)

(法令の適用)

罰条

判示各所為につき

(被告人会社) 法人税法一五九条一項、二項、一六四条一項

(被告人西尾) 法人税法一五九条一項

刑種の選択

(被告人西尾) 懲役刑選択

併合罪加重

(被告人会社) 刑法四五条前段、四八条二項

(被告人西尾) 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

刑執行猶予

(被告人西尾) 刑法二五条一項

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、判示第一の事実につき、被告人西尾が、名古屋市中区金山五丁目七〇三番外二筆の不動産売買に関して佐藤大二らに支払った二三一六万円を、損金に算入しないのは違法である旨主張するが、前掲各証拠によれば、右金員は、右不動産の売買契約をした真の当事者が被告人会社であることを隠すために、佐藤らが別会社の名義を貸すなどして協力したことに対する謝礼金及び別会社名義での登記費用として支払われたもので、純然たる脱税のための経費であると認められ、このような支出は収益を得るために必要なものではなく、所得を秘匿するためのものにすぎないから、これを損金に算入すべきではない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢尾和子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例